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しじゅうふわく
四十不惑
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 页
何となく僕を負担に感じているようだった。
或日、僕は会社の帰りに、そんな気もなく、小柴さんの後に従った。あすこへ行くなと思って歩いていたら、ビルデングの角に青年が待っていて、手を挙げた。小柴さんは走って行って一緒になった。二人は手に手を取るようにして、ビルとビルの間へ消えてしまった。その青年はベレー帽を被った例の洋画家だった。
思いもかけない、帯の一件から交際が始まっているのらしい。成程、それで家へ来なくなったのだ。妻と僕を欺いている。僕は煮え湯を飲まされたような心持がした。
翌朝、会社で顔が合うと直ぐに、僕は小柴さんを別室へ呼び入れて、
「小柴さん、あなたはいつかの青年画家と交際していらっしゃるんですか?」
と訊いた。
「…………」
小柴さんは顔色が変った。
「ありのまゝを話して下さい」
「そういうことは私の自由だと思いますけれど」
「無論あなたの自由ですけれど、あなたの両親なり先輩なりはあなたの幸福を考える立場にいます。のみならず、あなたをあの青年に引き合せたのは僕達夫婦ですから、責任を感じます」
「申上げないでいて済みません」
「あなた方はどういう関係になっているんですか?」