轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

「改造」1929(昭和4)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页

青空文庫

「どうしよう、俺はどうしよう?」

こう呟きながら、彼は手を負った獣のように走りだした。が、どこへ行く宛もない。両国の橋を渡れば、もうじきそこが松坂町の吉良邸である。彼はそこへ近づくことを一番恐れているくせに、やっぱりここへ来てしまった。が、今ごろそこへ行って何になろう?

「ああ、俺はもうどこへも行く所がない!」

もちろん、彼にはまだおしおの家があった。が、こうなった上は、もうおしおにも逢われる身ではない。今ごろ顔を見せたら、あの女がどんなに落胆して、どんなに泣くことであろう! 事によったら、自分を軽蔑するあまり、物をも言わずに突き出してしまうかもしれない。

で、女にも逢われないとすれば、小平太はいったいどこへ行くのだ? 逢われない逢われないと思いながら、彼の足はやっぱり柳島の方角へ向っていた。あれだけ近寄るのを恐れていた両国の橋を渡ったのも、考えてみれば、やっぱりおしおに逢いたさの一念からであった。

彼はいつの間にか妙見堂の裏手まで来ていた。雪明りに透しておしおの家が眼にとまった時、彼はぎくりとしたように足を駐めた。そして、ためらうように窓の明りを眺めていたが、きゅうに足を旋らして二歩三歩帰りかけた。