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よっかのあやめ
四日のあやめ
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,200 字 · 38 页
主税介はあっと口をあけた。
彼はいまのいままでその事を心配していた。狩りの当日には、徒士組から遠い持場に変えてもらい、衝突の危険を避けようと考えていた。それがすでに起こってしまったという、叔父の口ぶりでは小人数ではないらしい、どうするか。主税介は自分を抑え、おちついた眼で叔父を見た。千世が戻って来た。
「それはいつのことですか」
「早朝のことらしい、有難う」六左衛門は千世から天目を受取りながら云った、「詳しくは知らない、大目付に知らせる者があって、それは一刻ほどまえのことだというが」
「まだやっているのですか」
「いや」と六左衛門は水を飲んだ、さも美味そうに喉を鳴らして飲んで、それから云った、「籠崎大洲でしかじかと注進する者があって、大目付が人数を繰り出し、二の丸から高楷殿も出張されて、どうやらとり鎮めたということだ」
主税介は立とうとした。その中には自分が教えている門人や、親しくしている者が少なくない。とにかくいってみなければならぬ、と思ったのであるが、そのとき城中から、使番が馬で触書を示しに来た。
「城下に争闘をする者があったがすでにおさまった。非番の者、またお召しのない者は、その居宅で静かにしているように」