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よっかのあやめ

四日のあやめ

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,200 字 · 38 页

青空文庫

初めに死んだ者の遺族を訪ねた。唐沢辰之助の家では弟の菊二郎が出て、玄関に立ったまま上から見おろした。

「御丁寧なことですね」と菊二郎は云った。

「決闘には出ないがみまいには来るんですか」主税介は頭を垂れて辞去した。

村野大作の家でも、土田でも、坂島伊兵衛の家でも同様であった。言葉は違っても、表現する意味に変りはなかった。それでも主税介は二十七軒をぜんぶ廻ったが、最も近しい深松伴六の家では、父親の忠左衛門が出て「みまいは受けたくない」と云った。老人は骨ばった拳をわなわなさせ、もっとなにか云いかけたが、苦しそうに咳きこんだまま奥へ去った。

「みんなもう知っているのだ」主税介は自分に云った、「知らせたのに大洲へ来なかったということを、――怒るのが当然だ」

家中の人たちのようすがしだいに変りだした。はじめはそんなことはなかった。田口藤右衛門や浦原彦馬の来たとき、主税介がなにも知らなかったということをかれらは認めたし、知っていたらゆかない筈がない、ということは大抵の者が認めていた。しかし、「知らせた」ということは、拝郷源左衛門がすでに深松から聞いて知っていたし、それが家族の人たちにわかり、ついで家中ぜんたいに弘まってゆくことは、ごくしぜんななりゆきであろう。