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ちはゆたかなり

地は饒なり

宮本 百合子

「中央公論」1918(大正7)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,874 字 · 57 页

青空文庫

が見出されなければならなかった。自分が今も持たねばならず、学校を出てからも、死ぬときまでも持っていなければならない力が、要求されたのである。

一生の基となるもの、自分をほんとに偉くするもの、それは何だろう。

いくら考えても、答はやはり同じ、それは何だろうである。

彼女は、また今までよりもっと恐ろしい、もっともっと果もない疑いにぶつかった。追い払われていた、不仕合な悲しみや、辛さや、恐ろしさが、またソロソロと這い出して来た。どうしたらいいだろう。

洋罫紙の綴じたのに、十月――日と日附けをして書きながら、彼女は、カアッと眩しいように明るかった自分の上に、また暗い、冷たい陰がさして来るのを感じた。

すぐよかに、いみじかれ

我が乙女子よ……。

声高な独唱につれて、無意識に口をそろえ声を張りあげて

すぐよかに、いみじかれ

わが乙女子よ……。

と合唱の繰返しをつけている最中に、彼女にはフト、その「すぐよか」「いみじき」という言葉の意味が何だかはっきり分らないようになった。知っているつもりだったのに、何も浮んで来ない。ちっとも分らない。

驚いて、心に不安と混乱とを感じながら、自分の前に、隣りに、または後に、美くしい声を張って楽しそうに歌いつづけて行く仲間の顔を見まわす。