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ちきゅうぎ
地球儀
牧野 信一
「文藝春秋 第一巻第七号(七月創作附録号)」文藝春秋社、1923(大正12)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,115 字 · 9 页
「純一は少しは英語を覚えたかね」
「覚えたよ」と彼は自慢した。
「大学校を出たらお前もアメリカへ行くのかね」
「行くさ」
「もしお父さんが帰ってきてしまったら?」
「それでも行くよ」
そんな気はしなかったが、間が悪かったので彼はそう言った。彼はこの年の春から尋常一年生になるはずだった。
「いよいよ小田原にも電話が引けることになった」
ある晩祖父はこんなことを言って一同を驚かせた。「そうすれば東京の義郎とも話ができるんだ」
「アメリカとは?」彼は聞いた。
「海があってはだめだろうね」
祖父はまじめな顔で彼の母を顧みた。
彼は誰もいない処でよく地球儀を弄んだ。グルグルとできるだけ早く回転さすのがおもしろかった。そして夢中になって、
「早く廻れ早く廻れ、スピンスピンスピン」などと口走ったりした。するといつの間にか彼の心持は「早く帰れ早く帰れ」という風になってくるのだった』
そこまで書いて私は退屈になって止めたのだった。いつか心持に余裕のできた時にお伽噺にでも書きなおそうなどと思っているが、それも今まで忘れていたのだった。球だけ取り脱して、よく江川の玉乗りの真似などして、