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ちきゅうぎ

地球儀

牧野 信一

「文藝春秋 第一巻第七号(七月創作附録号)」文藝春秋社、1923(大正12)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,115 字 · 9 页

青空文庫

「これが本家の長男の純一です」

父方の叔父が、まだ私の知らない新しい親類の人に私を紹介した。そして私の喋り足りないところを叔父が代って述べたてた。

だいぶ酒が廻ってきて、祖父の話が皆なの口に盛んにのぼっていた時、私は隣に坐っている叔父に、

「僕の親父はなぜあんなに長く外国などへ行っていたんでしょうね」と聞いた。今さら尋ねるほどの事もなかったのに――。

「やっぱりその……つまりこのお祖父さんとだね、いろいろな衝突もあったし……」

――やっぱり――と言った叔父の言葉に私はこだわった。

「何ぼ衝突したと言ったって……」

「今これでお前が外国に行けばちょうど親父の二代目になるわけさ。ハッハッハッ……」

「ハッハッハ……。まさか――」とわたしも叔父に合せて笑ったが、笑いが消えないうちに陰鬱な気に閉された。

翌日、道具を片付ける時になると母はまた押入の前で地球儀の箱を邪魔にし始めた。

「見るたびに焦れったくなる」

「そんなことを言ったって、しようがないじゃありませんか」と私は言った。「どうすることもできない」

「たいして邪魔というほどでもない」

「だってこんなもの、こうしておいたって何にもなりはしない、いっそ……」