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あおいはらふじんのたいつり

垢石釣游記

佐藤 垢石

佐藤垢石『垢石釣游記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葵原夫人の鯛釣、青鱚脚立釣、秋の鮎、蛙を食う岩魚、河鱸遡上一考、鯨を釣る、小鰺釣、さしみ、戦場ヶ原の渓谷、早春の山女魚、釣聖伝、釣場の研究、弟子自慢、道具と餌と天候、アンコウの味、夏釣日記、冬の鯊釣、夜の黒鯛、ガラガラ釣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,298 字 · 100 页

青空文庫

鯨を釣る

一

一

僕は、大概の大物釣には経験を持っている。大鯛、ブリ、石鯛、マグロ、鮫などの猛勇も、僕の手に掛っては何れも降参しているのだが、まだ鯨だけは退治したことがない。

釣に趣味を持つからには、いま地球上に生存する最も大きな動物を、釣って見たいと思うのだ。一番大きな動物は鯨だけれど、僕の腕が冴えていたところで、この鯨だけは釣るわけには参るまい、と、多年鯨捕りの熱望を持ちながら諦めて来たのである。

ところが最近、極洋捕鯨会社の秘書課長村田光敬氏から

「君、鯨捕りを見物に行かないか」

と、誘われた。

「頼む」

時節到来、僕は二つ返事で答えた。

上野駅をたったのが三日。四日の正午頃日本の東の果が太平洋へ突き出している宮城県の牡鹿半島の突端にある鮎川港へ着いた。鮎川の町へ入ると異様の臭気が鼻を衝く。家も、道も、川、庭も、すれちがう人間まで馬鹿に臭い。

「何だか、ひどく臭いですな」

「これが鮎川港の特徴なんで――鮎川は鯨で生活している町なんだから、あらゆるものに鯨の匂いがしみ込んでいる」

と、村田氏は平気でいる。

「鼻が曲りそうだ――」

僕は、とうとう悲鳴をあげた。

「馴れれば大したことはない」