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あおいはらふじんのたいつり
垢石釣游記
佐藤 垢石
佐藤垢石『垢石釣游記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葵原夫人の鯛釣、青鱚脚立釣、秋の鮎、蛙を食う岩魚、河鱸遡上一考、鯨を釣る、小鰺釣、さしみ、戦場ヶ原の渓谷、早春の山女魚、釣聖伝、釣場の研究、弟子自慢、道具と餌と天候、アンコウの味、夏釣日記、冬の鯊釣、夜の黒鯛、ガラガラ釣。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,298 字 · 100 页
五
水夫長は空しく檣から降りて来た。船長も、砲の引金から手を放した。鯨の姿は、濃霧のなかへ永久に消え去ったのだ。
無念!
僕は思わず眩いたが、船長は
「落胆するには及びません、まだいくらでも鯨はいます」
と慰める。
また、午飯の時間が来た。卓上に、鯨のスキ焼鍋が乗っている。僕等は、額からも胸からもしたたり落ちる汗を拭いながら、熱い佳饌を飽喫耽味した。
午後三時ごろ、再び霧が薄くなった。いままで、海上には僕等の船のほか何ものもなかったのだが、薄く消え行く霧の中に、ほのかに一艘の鰹船を発見した。
船員が二、三人左舷へ駆け出して手を振ってその鰹船を呼びとめたのである。
五
それは網地島の第五明神丸という鰹船であった。船上に五十人ばかりの漁師たちが立っている。僕等の方から何もいわないうち、鰹船の方から一人の乗組員が大きな声を張りあげて
「ここから、東南十五、六浬のところに無数の大鯨が泳いでいる」
と、叫んだ。そこで、丹下船長は鰹船にビールと鰹の交換を申込んだ。直ぐ、快諾だ。ビールを三本繩に結んで鰹船の方へ浮してやると、先方からは大きな一貫目近くもあろうと思われる、釣ってほどもない活々とした鰹を七本送ってくれた。