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かわる

変る

豊島 与志雄

「知性」1942(昭和17)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,972 字 · 14 页

青空文庫

「もうお酒はおすみでしょう。一本きりですからね、帰って下さいな。初めから、ほんとにお断りしたかったんですよ。ずいぶん酔っていらっしゃるんでしょう。帰って下さいよ。まだお飲みになりたかったら、このへんに、飲ませるところはいくらもありますよ。ついこの先にもありますよ。うちでは、一本がきまりですからね。満洲のようにはいきませんよ。どなたにも同じですからね。どなたにも気持よく飲んで頂きたいんですからね。酒がすんだら、帰って下さいよ。」

その時、盃をやりとりしていた新来の二人連れから、大きな声が響いた。

「そうだ。お上さんのその意気だ。貧乏人も金持もねえ、みな同じだ。なあ。だからさ、お上さんを好きだってんだ。貧乏人も金持もねえさ。金でもって威張ろうたって、そうはいかねえや。ここに来ちゃあ、誰も彼も同じさ。お上さんの意気が嬉しいってことよ。」

大五郎は椅子から立上った。そして声のした方を向くと、そこにいるのは、言葉の調子とはまるで違って、商店員風な縞の着物の若者二人だった。

その二人は、大五郎の方をもう見向きもしないで、まあも一ついけよ、という調子で、朗かに盃をさしあっていた。