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なつくさせんき
夏草戦記
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,107 字 · 41 页
ときびしく命令をだした、「各隊は分散して伏せ斬り込んで来たらひっ包んで討つ、そうでなければ一弾も応射してはならぬぞ」昏乱しかけた兵はすぐに鎮まった。夜襲は烈しかった、大がかりなものではなかったが、誘い出そうとする戦法があからさまだった。第一夜には兵を五人と馬を一頭やられた、次の泊りは無事だったが、第三夜にはまた兵四人と荷駄を一頭失った。どうして山峡の間道をゆくこの小谷隊を敵が嗅ぎだすのかわからなかった、かれらはまるで見てでもいるように、正確に宿営地へ襲って来てはわずかながら必ずいくらかの損害を与えるのだ。かれらがどうしてこっちの行動を探知するか、それがわからぬ限り防ぐ方法は一つしかない、つまりどこまでも警戒を厳にし損害をできる限り少なくすることだ。弥兵衛は「立番」の定をきびしくした、現今の立哨に当るもので、……ゆるしなくして持場をはなれたる者は理由の如何にかかわらず死罪たること、そういう規律をかたく申しわたしたのである。暑熱と嶮路を冒して強行する兵士たちは、宿営地へ着くともうへとへとだった、その疲労しきったからだでなお立番に立つのは、刀を交えて戦うよりも苦しく辛い、けれどもそれは文字どおり全隊士の生命を預かる役目なのだ、ほんの一瞬のゆだんがどのような損害をまねくかも知れない、「定にそむく者は死罪」