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なつくさせんき

夏草戦記

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,107 字 · 41 页

青空文庫

二人とも無口な性質で、向き合っていても話などはろくろくせず、口で云うよりも心で語りあうという風だったから、こういう場合にはくだくだしい説明なしにぴたりと気持が合った。……内通者がいるとすれば尖隊の中だ、少数で先行しながら道をしらべ敵状をさぐって本隊を導く、つまり全隊の行動をきめるのだからその中にいるとみていいだろう、二人の意見はそう一致した、さいわい新九郎は相良隊にいたし源七は吉岡隊にいる、両者とも交番に尖隊をつとめるので好都合だ、……どのようなことがあっても他人に悟られるな、かたくそう誓いあって、二人はひそかに監視をつづけて来たのである。源七はいま、「そろそろ尻尾がつかめそうだ」と云った、事実なにかみつけたとすれば要慎のかいがあったというべきだ、新九郎はふと眼をあげて蝉しぐれの湧くような樹々の梢を見やった。

宮下を発した小谷隊はその夜、三笹という部落で宿営した。竹置ではめずらしく夜襲が無かったので、ことによると敵の追蹤からのがれたかと思い、また今夜こそあぶないぞという気もした。するとはたして午前一時ころになって「夜がけだ」という立番の叫びが聞え、ほとんど同時にごく近いところから敵が銃撃をあびせて来た、こちらはもう数回の経験で馴れているから、全員はすぐ分散してそれぞれ遮蔽物のかげへ身を隠したが、敵もまた