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なつくさせんき
夏草戦記
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,107 字 · 41 页
二
間もなく副将が戻って来た、かれは肩と腰に包物を結びつけた農家風の若い娘をひとりともなっていた。
「お旗がしらにお会いしたいと申しますのでめし連れてまいりました」
「おれに会いたい、……なに者だ」
「わたくしは初と申します」娘はまだ震えのとまらぬ声で云った、「三日まえに棚倉の在で、御家来のお世話になりましたので、それと、少しおたのみ申したいことがございましたので……」
「おまえ独りなのか、伴れはないのか」
はいと云う娘のようすをみて、敵の探索ではないと認めたのであろう、部将はうなずいて、ではこちらへまいれと云って宿所のほうへ戻っていった。
二
かなり疲れてもいるし空腹でもあるようだったので、宿所へつれて戻るとすぐに汗をぬぐわせ、また家の者に命じて食事をさせた。かの女は十七歳くらいの眉のはっきりした眼の大きな顔だちで、からだは成熟しかかっているのに人を見る表情はまだまるで少女らしい、その年ごろの娘によくみかけるようすの娘だった。言葉に訛があるのでたずねると陸前のくに柴田の生れで、これからそこへ帰る途中だということだった。
「それで、どうしてここまでたずねて来たのか」