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よるのわかば

夜の若葉

宮本 百合子

「婦人朝日」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,072 字 · 24 页

青空文庫

だから、父さんたち、頓馬だっていうのよ。……でも、こんな気持男のひとにわかるのかしら――」

それは順助自身の感情としてもはっきり理解されることであった。二人のたっぷりした人間らしさ。たっぷりした互の気に入り工合、それは自然な生命の横溢を希っている。偶然な血族の関係から不具の子供をもったりすることを恐怖する桃子の若々しい自然の抵抗は、それだからこそ深くひかれている桃子の真直な女らしいよさの一つの流露として順助の肺腑に迫るのであった。

やがて順助は、やや諧謔的に、

「どうも世の中のことは、こんなものだね」

そして煙草の匂をしずかに流しながら、

「この話は、では撤回しておこうね。その方がいいだろう?」

暫く黙りこんでいた桃子が、膝で順助の前へよって行った。

「ね、げんまんして」

小指をさしつけ、順助が黙ってさし出す小指に桃子は自分の小指を絡めて、子供たちが約束げんまん、しっしっしっと振る時のように真面目に力を入れて一つ二つ三つと自分で上下に振った。

「いい? 順助さん、約束して。私がこれからでもいつか本当に困ったようなとき、きっと相談にのってくれる?」

それは風変りな忘れられない晩であった。