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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

双方入り合いの草刈り場所を定めたこと、新たに土塚を築いて境界をはっきりさせること、最寄りの百姓ばかりがその辺へは鎌を入れることにして、一同福島から引き取って来たことを告げた。

「それはまあ、よかった。お前の帰りがおそいから心配していたよ。」

と吉左衛門は庭の箒を手にしたままで言った。

もはや秋も立つ。馬籠あたりに住むものがきびしい暑さを口にするころに、そこいらの石垣のそばでは蟋蟀が鳴いた。半蔵はその年の盆も福島の方で送って来て、さらに村民のために奔走しなければならないほどいそがしい思いをした。

やがて両村立ち合いの上で、かねて争いの場処である草山に土塚を築き立てる日が来た。半蔵は馬籠の惣役人と、百姓小前のものを連れて、草いきれのする夏山の道をたどった。湯舟沢からは、庄屋、組頭四人、百姓全部で、両村のものを合わせるとおよそ二百人あまりの人数が境界の地点と定めた深い沢に集まった。

「そんなとろくさいことじゃ、だちかん。」

「うんと高く土を盛れ。」

半蔵の周囲には、口々に言いののしる百姓の声が起こる。

四つの土塚がその境界に築き立てられることになった。あるものは洞が根先の大石へ見通し、あるものは向こう根の松の木へ見通しというふうに。