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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

離脱の運動を開始したのは慶応元年のころに当たる。義髄はそのために庄屋の職を辞し、京都寺社奉行所と飯田千村役所との間を往復し、初志を貫徹するために前後四年を費やして、その資産を蕩尽してもなお屈しないほどの熱心さであった。徳川幕府より僧侶に与えた宗門権の破棄と、神葬復礼との奥には、こんな人の動きがある。しかし世の中は変わった。その年、明治六年の十一月には、筑摩県権令永山盛輝の名で、神葬仏葬共に人民の信仰に任せて聞き届ける旨はかねて触れ置いたとおりであるが、今後はその願い出にも及ばない、各自の望み次第、葬儀改典勝手たるべしの布告が出るほどの時節が到来した。木曾福島取締所の意をうけて三大区の区長らからそれを人民に通達するほどの世の中になって来た。これは半蔵にとっても見のがせない機会である。彼は改典の事を共にするため、何かにつけての日ごろの相談相手なる隣家の主人、伊之助を誘った。

菩提寺任せにしてあった父祖の位牌を持ち帰る。その塵埃を払って家に迎え入れる。墓地の掃除も寺任せにしないで家のものの手でそれをする。今の寺院の境内はもと青山家の寄付にかかる土地であるから、神葬の儀式でも行なう必要のあるおりは当分寺の広庭を借り用いる。