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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

の覚悟を取る、それが国を興すの早道だというのである。そして事は早いがいい、今のうちにこの大計を定め国家の進路を改めるがいい、これを決行する時機は大使帰朝前にあるというのである。なぜかなら、大使帰朝の後はおのずから大使一行の意見があって、必ずこの反対に出づるであろうと予測せられたからであった。その武政を立つる方案によると、全国の租税を三分して、その二分を陸海軍に費やす事、すでに士族の常職を解いた者は従前に引き戻す事、全国の士族を配してことごとく六管鎮台の直轄とする事、丁年以上四十五歳までの男子は残らず常備予備の両軍に編成する事、平民たりとも武事を好む者はその才芸器量に応じすべて士族となす事、全国男子の風教はいわゆる武士道をもって陶冶する事、左右大臣中の一人は必ず大将をもってこれに任じ親しく陛下の命を受けて海陸の大権を収める事、これを約めて言えば武政をもって全国を統一する事である。この意見を懐にして西郷に迫るものがあったが、隆盛は容易に動かなかった。彼は大使出発の際に大臣参議のおのおのが誓った言葉をそこへ持ち出して見せ、大使帰朝に至るまではやむを得ない事件のほかは決して改革しないとの誓言のあることを言い、今この誓言にそむいて、かかる大事を決行するの不可なるを説き、大使帰朝の後を待てと言いさとした。