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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

半蔵はこんな内部の動揺しているところへ飛び込んで行ったのであった。役所での彼の仕事は主として考証の方面で、大教院から回して来るたくさんな書類を整理したり、そこで編集された教書に目を通したり、地方の教会や講社から来るさまざまな質疑に答えたりなぞすることであった。彼も幾度か躊躇したあとで、全く無経験な事に当たった。いかんせん、役所の空気はもはや事を企つるという時代でなく、ただただ不平の多い各派の教導職を相手にして妥協に妥協を重ねるというふうであった。同僚との交際にしても底に触れるものがない。今の教部省が神祇省と言った一つの時代を中間に置いて、以前の神祇局に集まった諸先輩の意気込みを想像するたびに、彼は自分の机を並べる同僚が互いの生い立ちや趣味を超えて、何一つ与えようともせず、また与えられようともしないと気がついた時に失望した。のみならず、地方の教会や講社から集まって来る書類は机の上に堆高いほどあって、そこにも彼は無数のばからしくくだらない質疑の矢面に立たせられた。たとえば、僧侶たりとも従前の服を脱いで文明開化の新服をまといたいが、仏事のほかは洋服を着用しても苦しくないか。