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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

旨を答えた。入檻は二十二日の朝まで続いた。ようやくその時になって、寄留先の戸主をお呼び出しになり宿預けの身となったことを知ったという。

「でも、わたしもばかな男じゃありませんか。裁判所の方で事実を問い詰められた時、いくらも方法があろうのに、どうしてその方はそんな行為に出たかと言われても、わたしには自分の思うことの十が一も答えられませんでした。」

半蔵の嘆息だ。それを聞くと多吉は半蔵が無事な帰宅を何よりのよろこびにして、自分らはそんな野暮は言わないという顔つきでいる。

多吉は言った。

「青山さん、あなただって今度の事件は、御国のためと思ってしたことなんでしょう。まあ、その盃をお乾しなさるさ。」

今一度裁判所へ呼び出される日を待てということで、ともかくも半蔵は帰宅を許されて来た人である。彼にはすでに旧庄屋としても、また、旧本陣問屋としても、あの郷里の街道に働いた人たちと共に長い武家の奉公を忍耐して来た過去の背景があった。実際、あるものをめがけて、まっしぐらに駆けり出そうとするような熱い思いはありながら、家を捨て妻子を顧みるいとまもなしにかつて東奔西走した同門の友人らがすることをもじっとながめたまま、交通要路の激しい務めに一切を我慢して来た彼である。