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ゆめのさつじん
夢の殺人
浜尾 四郎
「新青年」1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,670 字 · 26 页
彼は真夜中頃に突然目がさめた。
パチンと誰かが彼の頭の上にいつもついている十二燭の電気を消したのである。明るい部屋が突然暗くなったので、却って彼は目をさましたのかもしれなかった。
その時その闇の中ではっきり彼がきいたのは要之助が、
「なーに、かっぱさん、豚のように眠ってるよ」
という声と誰か他の人間がくすりと笑う声であった。
秋の日かげはうららかに射している。
藤次郎は燃えるような胸の焔をいだきながら浅草公園の池の辺を歩いている。
何ともかとも云いようがない。それにわざわざ……。
虫も殺さぬような顔をした要之助があんな図々しいことを云ったり、したりするとは思わなかった。女も女だが男も男だ。奴は全く食わせものだったのだ。いやに真面目らしくおとなしく振舞っていたのは女をひっかける手段に過ぎなかったのだ。田舎にいる頃、あれでは何をしていたか判ったものじゃない。
斯う考えた時、藤次郎は百足でもふみつけたような気持に襲われた。
今朝、国から来た友達をつれて東京見物をさせてやるから、という好加減な口実を設けて一日のひまを貰った時、主人にいっそ昨夜のことを告げてやろうかとも考えた。