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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

見ればその真中を村の青年たちがおおぜいかかって、太い縄のようなものを担いで、それに繋がって静に歩いてゆく、その傍に立って、一人列を離れて音頭を取っている老爺がある。がんじょうそうな小柄な男である。肌脱ぎの中腰になって、体を左右にゆすぶりながら、右の手に持った扇を煽るようにして揮って、しきりに何やら喚いている。多少だるそうにも見える青年の行列に対照して、これはまた異常な熱狂ぶりである。太い縄のようなものといったのは、流星に火を点ずる時の導線となるもので、その中に火薬が詰めてあるとのことである。

桟敷は社外の畑に多数設けられてある。丘陵の側面などにも点々として灯が見える。その界隈一体に人が充満していて動きが取れない。甲州辺からも遣って来る見物客もあるという話である。やがて打揚がぽんぽんとあがる。桟敷では歌謡の斉唱がはじまる。一方からそれが起ると忽ちに四方に伝播する。そして幾度も反復される。田の蛙の鳴き交す声々の嵐そのままに感ぜられる。

そのうちにいよいよ流星に火が附くというものがある。正直のところ鶴見ははじめからそれほどの大光景が見られるものとは期待していなかった。