轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

かれの孤独は一層甚しくなる。それにもかかわらず、鶴見はよく堪えて、静かに引籠って、僅かにその残年を送っているのである。

その鶴見がきょうは珍らしく機嫌が好い。梅の花が咲き初めたということがまだかれの思考を繋ぎとめているらしい。

『正法眼蔵』に「梅花の巻」といわれているものがある。かれはそうと気がついて、急に見たくなって、傍に書架があれば、手を出してその本を探したいような心持がした。そうは思ってみても、今の境遇ではそのようには行かない。かれの蔵書はすべて焼けて灰になっているのである。梅花の巻に代えて劫火の巻が眼前に展開する。またしても寂しい思いがさせられる。せっかく明るくなっていた気分が損われるのを惜しんでもしかたがない。かれは気を励まして、本なんぞに追随するのを止めて、まだ手馴れていない批判的態度に出てみるのも面白かろうと考えている。もし間違っていれば引込ますだけのことである。かれもここで少し横著な構えになる。

『正法眼蔵』が何であろうと、今日のかれには余り関わりはないはずである。あれを書いた道元は禅には珍らしく緻密な頭脳を持っていたということを、誰しもが説いている。