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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
宿命的孤独と自由
鶴見にはそれだけの変化が起った。
継母は継母らしく振舞ったのである。鶴見はそう思って、別段に悪感情も懐かずにじっとしていた。
宿命的孤独と自由
まだ中学に入らぬ少し前のころであった。多分明治十九年も押詰まった暮のことであったかと思う。その年ひどく流行した麻疹に感染して、一応はどうやら癒ったものの、病毒が廻って全身に吹出物を生じた。薬湯に連れて行くにもあまり見苦しいので家人も億劫がっていたところ、西岡という若い未亡人が来て、自分の遣らせている塩湯はどうだろうと勧めてくれた。家人のためには渡りに船であった。
塩湯というのは京橋木挽町河岸にあった。そんなわけで鶴見はさっそくそこへ遣られた。出養生である。幼少の鶴見にとっては、これが家庭以外の世間というものにはじめて触れて、未知の境界を少しずつ知る機縁となった。
鶴見はその塩湯に寝どまりすることになって、万事は西岡の若い未亡人がよいように取運んでくれた。朝早くまだ誰も入浴に来ないうちを見計らって、風呂の蓋を開けてもらい、湯気の盛んに立つ綺麗な湯につかるのである。鶴見ははからずも一番風呂の贅沢を独占する。その上にも一しょに入る未亡人からは、流し場で、一面に瘡になった体をたでてもらえる。