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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

かれはこれで死んでゆくのではないかと疑った。死ぬ前にもう一度阿弥陀仏をおがみたいと思って目をあげると、闇は開いて、尊像は何事もなかったように金色の光を放って立たせたまう。台座を見ると、蓮弁はこれももとのままに合さっている。かれはこれを見て驚くとともに安心した。そのはずみにまた夢がさまされた。

夢から醒めた鶴見には、生死事大、無常迅速という言葉のみが、夢のあとに残されている。まだどこやら醒めきらぬ心のなかで、平凡な思想だとおもう。そんな平凡な思想が、言葉がどうしてあのような不可思議な影像を生み出したかと追尋してみる。奥が知れぬほど深い。今更のように、せつないものが胸に迫ってくるのである。

死という観念が改まったすがたで、意識の上に頭を出す。

ここには生あるすべてのものを刈り尽す大鎌がある。薙げば薙ぐほど自然に磨ぎすまされる大鎌である。それを見まいとしても見ずにはいられない。それを思うまいとしても思わずにはいられない。

しかるにこれはまたどういうわけか、鶴見はいざとなると、自分のことは棄てておいて、友人や先輩などの死について追想する。それも徒事ではあるまいが、おかしな心理といわざるをえない。