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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

「俺には出来ねえ、殺生な真似はな」

「じゃあお前は縮尻ぜ」

源太夫は返辞をしなかった。

「叩かれると犬は従いて来る。撫すると犬は喰らいつく。……」

源太夫は考え込んだが、突然飛び上り喚声をあげた。

「お前の云うことは嘘じゃねえ!」

23

この時二階の一室では、最後の節が唄われていた。

小堀義哉の心の中は泉のように澄んでいた。

なんの雑念も混じっていなかった。死に面接した瞬間に、人間の真価は現われる。驚くもの恐れるもの、もがくもの泣き叫ぶもの、そうして冷やかに傍観するもの、又突然悟入するもの、しかし義哉の心持は、いずれにもはまっていなかった。彼は三味線の芸術境に、没頭三昧することによって、すべてを忘れているのであった。

『山姥』の曲が終ると同時に、彼は死ななければならなかった。そうして殺し手が白刄を提げ、彼の背後に立っていた。

時はズンズン経って行った。

もう直ぐ曲は終わるのである。

露にもぬれてしっぽりと、伏猪の床の菊がさね……

彼は悠々と唄いつづけた。

異風変相の浪士達にも、名人の至芸は解ると見えて、首を垂れて聞き惚れていた。

独楽師に扮した一人の浪士は「旨い!」