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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页
そうして計らずも道に迷った。と、木の陰に四五人の樵夫が、何か大声で喚いていた。近寄って見ると彼らの中に、一人の老人が雑っていた。襤褸を纏った乞食風ではあったが、風貌は高朗と気高かった。その老人がこんなことを云った。
「ここに小さな壺がある。が、普通の壺ではない。摩訶不思議の仙人壺だ。そうして俺は仙人だ、嘘だと思うなら見ているがいい。この壺の中へ飛び込んで見せる」
それから老人は立ち上り、一丈あまりも飛び上った。と、体が細まりくびれ、煙のように朦朧となり、やがてあたかも尾を引くように、壺の中に入って行った。
「見事々々!」と樵夫どもは、手を叩いて喝采したが、物慾の少ない彼らだったので、そのままそこを立ち去った。
よろこんだのは金兵衛で「こいつを香具師に売ってやろう。うん、一釜起こせるかもしれねえ」壺を抱えて山を下った。
さてその晩旅籠へ泊まると、早速怪奇が行なわれた。壺が音楽を奏したのである。金兵衛はとうとう発狂した。旅籠の主人は仰天し、この壺を役人へ手渡した。それを聞いたのが勝頼で「面白い壺だ、持って来るがいい」
で、その壺は勝頼の手で大事に保管されることになった。