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てんぐいわのさつじんま
天狗岩の殺人魔
山本 周五郎
「少年少女譚海」1938(昭和13)年春の増刊号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,872 字 · 18 页
――僕は今朝警察へ行って云ったんです。大切なのは源助が殺された事ではなく、どんな理由で殺人鬼が源助を殺したのか? その点を確めなければ解決の鍵は握れないッて」
「貴様……警察などへ行ったのか」
「だってそうでしょう。権六は殺人鬼だが、金品を盗むのが目的です。京大阪の事件もみんな富豪か名士に限られています。それなのにどうして此処では貧乏な石屋の老人などを殺したか、――その点が最も重大ですよ」
「呆れた奴だ」
平野氏はかんかんに怒った。
「いったい貴様それで宜いのか、学問などは抛放しで、そんな事となるとまるで気違い騒ぎだ。もう学校などは止めて探偵にでも成って了え※(感嘆符二つ、1-8-75)」
「まあそう怒らないで下さい」
「怒るのは当然じゃ、貴様などには一文も遺産はやらんからそう思え、馬鹿馬鹿しい」
「僕だって」と祐吉は立上って、
「遺産なんか欲しくはありませんや」
「な、何を、このッ」
平野氏が突立上るより早く、祐吉はにこにこ笑いながら素早く庭へ飛出して行った。
祐吉は医科大学生であるが、法医学(犯罪に関する医学)をやっているので、こんな事件に興味をもつのは当然であった。