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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

その鎖のはしは、床下に、しっかりと埋っている。まるで重罪人あつかいだ。

「おい、できたか。どうもこの悪臭には、降参だな」

「もう大丈夫です。絶対に逃げられません」

「そうか。では、その方は、それでよしと、あとは飯をくわせてやれ。酒もすこしばかりつけてやれ。だがこの悪臭の中で、食えるかな」

衛兵長が、そういいながら出ていこうとするので、五人の部下はおどろいて、

「衛兵長。どこへいくのですか」

「うん、おれはちょっと、司令官のところへ報告をしてくる。お前たちは、いいつけたとおり見はっているんだ」

衛兵たちは、たがいに顔を見合わせてあきれた。が、衛兵長の靴音がきこえなくなると、彼等もみんな外に出た。

「ここならまだ、ましだ。この中にいちゃ、目まいがしそうだ」

「じゃおれは食物をとってくるからな」

「いや、それはおれがいこう」

「待て、おれもいく」

衛兵たちは、先をあらそって、廊下をかけだして行った。あとには、気のよい衛兵が、たったひとりで、廊下ではり番をしている。

太刀川時夫は、悪臭をじっとがまんしながら、ゆがんだベッドに腰を下した。祖国日本の一大事を、どうして知らせたものかと、おもいなやんでいるのだ。