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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
牛男というのは、酔っぱらいのリーロフ大佐のことだった。クイクイの神様は、つと手をのばして、リーロフの服にさわったかと思うと、ぎゃっとさけんで、掌のうちに一箇の鶏卵をぬきとった。
「おお、牛男は、卵を生んだ」
クイクイの神様は、あきれ顔のリーロフ大佐の掌に、いま彼の服からぬきとった卵をのせてやった。
「あれ、この髭もじゃ先生、おれの体から卵を、ぬきだしやがったぜ。これは、ふしぎだ」
リーロフは、目をまるくして、掌のうえにのっている卵をみていたが、
「おお、ほんとうの卵だ。この海底要塞の中で、卵にお目にかかるなんて、たいへんな御馳走にありついたものじゃ」
ケレンコ司令官をはじめ、その場にいあわせた将校や兵士も、クイクイの神様の手なみにあっけにとられている。
「ああ神よ。次なる奇蹟は、こっちのいかめしき鮭男から、下したまえ」
クイクイの神様は、こんどはくるりと後へむいて、手を衛兵長の腰のあたりにさしのばした。
「これ、そばへよるな」
衛兵長が、たじたじとなる刹那、
「ええい!」
クイクイの神様は、衛兵長の腰のあたりから、また一箇の鶏卵をぬきだして、その掌のうえにのせてやった。