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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
当のケレンコとリーロフが、知っているかどうか知る由もないが、艇内はにわかに、重苦しい空気につつまれて行った。
太刀川時夫は、座席にふかく体をうずめたまま、じっとこらえていた。
(怪しい奴といえば、あの向こうの隅に睡りこけているケント老夫人と、酔っぱらいのリキーの二人組だが……)
太刀川は、どういうものか、二人組が気になって仕方がなかった。
(しかし待てよ。共産党員のケレンコとリーロフというのは、どっちも男だ。ところがあの二人は、一人は荒くれ男だけれども、もう一人の方はお婆さんではないか。するとこれは、別人かな)
と思ったが、それでもなお、彼はこの二人組から、目を放す気持にはなれなかった。
その時であった。
とつぜん防音扉が、ばたんとあいてどやどやと捜索隊がはいってきた。
(すわこそ!)
と、太刀川時夫は席から立ちあがろうとしたが、いやまてと、はやる心をおさえつけて、そのまま席に体をうずめた。
「ひどい奴だ。さあ、こっちへ来い」
隊長らしい艇員の一人が、声をあららげて、誰かを叱りとばした。
(さあ、始ったぞ。リキーの奴がひきたてられるのか!)
太刀川は、印度人夫妻の肩ごしに、その方に目を光らせたが、リキーは今目をさましたらしく、両腕を高く上にのばして、大あくびをしているところだった。