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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
「どうだい皆。二人組の共産党員の心あたりはついたかね」
「はい、私の受持の部屋には、怪しい者は見当りませんでした」
「私の受持でも、駄目でした」
「そうか。じゃあ、皆、獲物なしというわけだね」
ダン艇長の顔には、深い憂の皺がうかんだ。その時、
「艇長」
とよびかけたのは、事務長だった。
「何だ」
「あの本社からの秘密無電に、誤りがあるのではないでしょうか。もう一度、本社へたずねてみては、いかがでしょう」
「そうだね。いや、もっともだ」
艇長はうなずいた。彼は通信長を電話によび出し、
「おい、すぐ本社へ無電連絡をたのむ。なに、天候状態がわるくなったって、それは困ったね。だが大事なことだから、なんとかして、至急本社と連絡をとってくれ」
艇長は、電話機をかけた。
「天候が悪くなったそうだよ」
「そうですか」
と事務長は、丸窓から外をのぞいてみて、
「ああ、あそこへ変な雲がでてきました。不連続線のせいですよ。一荒れ来るかもしれません」
艇長も外に目をやった。なるほど、南の方から、まっ黒な雲がむくむくとのぼってくる。
「海の上の気象は、これだから困る。操縦室へ、注意をしてやれ、それから事務長、マニラへ無電をうって、すぐさま近海気象をたずねてくれたまえ」