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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
この力綱の輪は、胴体のくぼみに、はめこまれて、一列にならんでいるので、太刀川は、腹ばったまま、少しずつ前進しては、くぼみから、この力綱の輪をおこさなければならなかった。そして両手ばかりではなく、両方の足首も、この輪のなかにしっかり、かけておく必要があった。
「ひゃあ――」
というようなさけび声が、太刀川のうしろからきこえた。ふりかえってみると、大男のリーロフが胴体にしがみついて、はげしい風にふりおとされまいとして、力一ぱいたたかっている。
「おい、はやくこーい。この弱虫めが!」
太刀川は、リーロフをどなりつけた。
「うう、いまゆくぞ。なにくそ!」
風は、大男のリーロフにたいして、すこぶる意地わるだった。風のあたる面積が太刀川青年の体にくらべて、倍くらいもひろいのだからやりきれない。海底にもぐっては、いささか自信のある潜水将校リーロフも、空中ではからきし、いくじがない。
そのうちに太刀川の頭が、まがった方向舵にこつんとつきあたった。
十分ののち
暴風雨中のこの大冒険を、艇員や乗客は、操縦室、そのほか方向舵の見える場所に、顔をおしつけあって、どうなることかと見まもっている。