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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

いじらしい石少年よ。その時、

「艇長! スミス操縦長からの伝言です」

「おお、なんだ」

「本艇は、艇長の命令により、二千メートルの下降をおわりました。やがて雲の下に出られる見こみがたちました」

「そうか、ついに暴風雨をのりきったか。では操縦長にこうつたえよ。下界が見えるところまで雲の下に出ろとな」

「は、そうつたえます」

「それから針路は、さっき言ったとおり、もとの方向へもどっているだろうなと言え。もう一つ、ガソリンの量を至急しらべて報告してくれ」

「はい」

伝令員の、ひっかえしてゆく足音がきこえた。

「艇長、ケレンコはどうしました」

「ケレンコは、あなたの計画どおり捕らえて、貨物室におしこめてあります」

「本艇は、暴風雨圏からうまくのがれたのですか」

「そうです。もう風雨はしずまっています」

「着陸地点までとべますか。無電連絡はまだつきませんか」

そう言っている時、どこやら、はなれたところで、はげしく人のあらそう声がきこえた。それにまじって、がらがらと物のこわれる音だ。すわ、また事件か?

どたどたとかけこんでくる靴音!

「艇長、たいへんです。ケレンコがにげました」

「なに、ケレンコがにげたって」