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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
「あ、先生。わたしの体、ながされる。おお、大きな渦、先生、あぶない」
「なに、渦だ。うーむ。いよいよやってきたか」
太刀川が、そうつぶやいた時、石少年の体が、まるで船にでものっているように、すーっと、目の前を流れた。
「せ、先生。渦がわたしをひっぱるよ。た、助けて!」
石少年の細い腕が、高くあがったのを見た。
しかしそれと同時に、太刀川の体も渦にのって流されはじめた。
「おお、石、しっかりしろ!」
もう石少年の返事はない。そのうちに、ぴちぴちという生木をさくような、ぶきみな音が、渦のまん中と思われるあたりから聞えだし、彼の体は、くるくるとまわりだした。
「む、無念だ」
と思った時、急に足が下にひっぱられるような気がした。必死にもがいたが、むだであった。太刀川の体は、いよいよはげしく、まるでこまのように早くまわりだした。
「もう、だめか」
彼は観念の眼をとじた、瞬間、頭の中をかすめるものがあった。
原大佐の顔、
重大使命は?
海魔は?
ケレンコ、リーロフは?
やがて彼の気は、だんだん遠くなっていった。
× × ×
太刀川時夫と石福海を、のみこんだ大きな黒い渦は、ゆらりゆらりと所をかえて行く、その底のあたりに、何か、ぴかりぴかりと光るものがあったが、ごーっという海鳴が一だんと高くなり、あたり一面が