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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

野村胡堂『奇談クラブ(全)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 页

青空文庫

ように近付くのです。

「いやいや、俺は何時繩目を受けるかも知れない身体だ、お園、退いておくれ、お園」

思い直して丈太郎が、娘の身体を突き退けましたが、

「あれ、丈太郎様、どうぞ思い直して、元のお前の心になって下さい、仏像を焚く代りに、一寸刻み、五分刻みに、私の身体を焚いても構わない、丈太郎様、丈太郎様」

娘はその柔かい弾力的な肢体を揉んで、丈太郎の身体から離れようともしません。

「たった一つ、俺を救う道がある」

「え、それは何ういう?」

「いや、言うだけ無駄だ、これは言わない方が宜い」

うっかり口を滑らしたらしい丈太郎は、あわてて斯んな事を言い紛らしますが、藁にも縋る気のお園は、それを訊さずには措きません。

「仰しゃって下さい、どんな事でも仕ましょう、お前の心を救う薬があるなら、地獄の火の中からでも、私は取って来て上げ度い」

お園は男の肩にその華奢な手を投げ掛けて、子供のように身を顫わしました。

「言ったところで何うもなるものではない、来年の念願だが、若し天下第一の名香『東大寺』を聞くことが出来たら、私の邪念が霽れるかも知れない」

「え、え?」

「東大寺と言うのは、下々では手に入れる由も無い、蘭奢待の名香だ、――若しそれを手に入れて、思いおく事なく焚くことが出来たら、鼻観邪道に踏み入った私も、迷いの雲を払い落して、元の丈