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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

野村胡堂『奇談クラブ(全)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 页

青空文庫

私と礼子との濃やかな交情

――黙って居ると、気味が悪くなりますね。街の遠音の中へ、引き入れられるような――」

「だから電灯を灯けましょう」

「イエイエ私は矢張り此の方が宜いんです。万一、こんなところを見られたら、弁解の仕ようがありませんもの」

「…………」

「でも、怖いわねエ、熱帯植物の、強い香気のせいでしょうか、それとも――」

礼子の軟かい両手は、何時の間にやら私の膝の上に載って、若い血潮のほの匂う頬が、近々と私の唇のあたりに感じます。

何んと言う女でしょう。

私はそッと身を反らせました。

私と礼子との濃やかな交情

温室の中で、朝の爽やかな光に照し出された、二人の気まずさは申すまでもありません。それでも、小使が差掛屋根の扉を開けてくれるのを待って、手を取り合わぬばかりにソッと八階へ降り立った時は、何んか名残り惜いようなやるせないような、物足らなさに悩まされたものです。

共同経営者の丸茂三郎は、私より十五、六も年上で、相当世故にも長けた男ですが、それでも、香川礼子を引き合せた時は、たった一ぺんで気に入ってしまいました。

こんなに美しくて、こんなに技倆の優秀なタイピストは、丸ノ内界隈にも、全く三人とは無いでしょう。