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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
野村胡堂『奇談クラブ(全)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ、新奇談クラブ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 页
新奇談クラブ
大名生活の一断面
殿様に許嫁を奪われた男
大名生活の一断面
「エロとかグロとか言ったところで、今の人の嗜好や経験は多寡が知れて居ますが、昔の専制的な大名には、随分飛び離れた生活をした人があったようですね。これは私の大伯父から聞いた話で、掛値の無い事実談ですが、荒淫な大名生活の一断面を知る為には、持って来いの恰好な物語でしょう。時は士気も綱紀も頽廃し切った天保の末、大名は小身乍ら、維新にかけて鳴らした人物ですが、旧藩関係で差し障りあるといけませんから、仮に本田北見之守として置きましょう」
第八話の選手旗野広太は、妙に気の利いた調子で始めました。奇談クラブの談話室には、いつもの十三人が顔を揃えて猟奇に燃える瞳を輝やかします。
殿様に許嫁を奪われた男
「何時まで貴公は我慢をする気だ」
「何?」
「空とぼけてはいけない、お雪殿のことだよ」
「フーム」
言い当てられて、南条左馬之助は、あわただしく拱いた腕を解きました。
本田北見之守の家中、百五十石を食む南条左馬之助は、取って二十三歳の秀麗な眉目を、この二た月三月の間、梅雨空のように曇らせてばかり居るのでした。
「無理もないよ南条、武士たるものが、許嫁の女を横取りされて、指を銜えて見て居るという法は無い、たとい相手は主君だろうが、殿様だろうが――」