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じょよう

女妖

江戸川 乱歩

01 前篇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,691 字 · 20 页

青空文庫

婦人は手提げから鍵を出してドアをひらき、電燈のスイッチを押した。フックラとした肘掛椅子と長椅子、派手なクッションが三つ四つ、赤い模様の絨毯、それが居間で、次の部屋が寝室らしく、立派なベッドのはしが見えていた。

「ちょっと待っててね。そこに掛けて」

婦人は寝室の中へ姿を消した。

しばらく待たせて出て来た時には、黒ビロードのガウンと着更えていた。そして、小さな銀盆の上に洋酒の瓶とグラスを二つのせたのを持っていた。浩一と向き合った椅子にかけて、グラスに手際よく洋酒をつぎ、その一つを彼の方にさし出しながら、突然、

「あなた、ご両親は?」

とたずねた。

ビロードのガウンには、まっ赤な絹の裏がついていた。身動きするたびに、それがめくれて、腕や脚の部分が、チラチラと見えた。ガウンの下には何も着ていないらしく、からだ全体の線が、しなやかなビロードごしに、そのまま眺められた。なんてすばらしいからだだろうと思った。ふと、あの聖母に似て聖母よりもなまめかしい裸女の巨像が浩一の頭をかすめた。

「両親なんてないのです」

グラスの強い酒が、浩一の喉をカッとさせ、婦人のからだから発散する香気にうっとりとなった。