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じょせい

女婿

佐々木 邦

「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页

青空文庫

「嘘を仰有い。今日も何です? 案外だよ、君のは杞憂だったよと仰有ったでしょう? あなたは、私をそんな悪人と思っていらしったんですか?」

「さあ、それは……」

と清之介君は全く受け太刀になってしまった。芝居なら、さあ/\さあ/\と掛け合いになって行き詰るところだ。

「御覧なさい。碌すっぽ御返辞も出来ないじゃありませんか? 理由を聞きたいなんて能く仰有れますのね?」

「それはあなたの誤解です。私はあなたのお気に入るか何うかとそれを案じたんです。辻村君もそれを案じてくれたんです。それが案外杞憂だったと話していたんです」

「へゝえ。それじゃ気に入った積りでいらっしゃるの? あなたは。私、嘘をつく人は気に入りませんよ」

「嘘じゃありませんよ」

「いゝえ。嘘です、嘘ですよ。嘘ばかりついて……私が何にも知らないと思って踏みつけにして……口惜しい! 口惜しいゝ!」

と妙子さんは全然優勢な立場にも拘らず、急に泣き出した。

「まあ、お嬢さま」

とお富は立ち聞きを止めて襖の蔭から姿を現した。

清之介君は尠からず狼狽した。こんな大事になるようなら、矢張り凝っと虫を殺していれば宜かったと今更後悔しても取返しがつかない。