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じょせい
女婿
佐々木 邦
「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页
「何うも済みませんでした。そんなに晩くもないのに自分都合で早合点してしまって」
と機嫌よくお給仕をしてくれた。清之介君は安心した。この分では矢張り少し威張る方が宜いとさえ思った。
食事が終った時、妙子さんは、
「あなた、今夜の長唄はラジオよ」
と言った。
「長唄がラジオですか?」
「あら、間違ったわ。今夜のラジオは長唄でございますよ」
「それなら分ります。何うも変だと思いました。長唄がラジオという法はない」
と清之介君は一端遣り込めた積りだった。実務家の諧謔味は大抵これぐらいのところである。
「覚えていらっしゃいよ」
「この間は清元がラジオでしたね?」
「宜うございますわ。それなら今夜は長唄がラジオよ。長唄がラジオですから、私、聞きたいんだわ。参りましょうよ」
と妙子さんは清之介君を誘ってもう一遍お里へ行きたかったのだ。
「さあ」
と清之介君は煮え切らない返辞をした。音曲には実のところ没趣味である。里へは成るべく行きたくない。それに一日働いて草臥れていた。
「お厭?」
「さあ、何うしましょうか」
「お厭なら舎しましょう」
「私、留守番をしますから、あなた、お富をつれていらっしゃい」