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おんなごころしゅうい
女心拾遺
矢田 津世子
「文学界」1936(昭和11)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,514 字 · 36 页
毎日、園子からその話をきかされる横尾氏も、つい、おしものことが心にかかって、出社をしていても、それとなく独身の社員を探すようになる。木村康男といって、本年二十八歳、商業出の俸給六十円、会計課勤務の男と、もうひとり、永年この社の小使いをしている安藤久七という四十男、先年女房に死なれたのでその後釜を欲しがっているという。横尾氏はこの二人を候補者に内定しておいて、万端は園子へまかせてしまった。
今日も、電話口へ呼び出された老夫人は、園子に返辞を強いられて、
「まだ、お父さまへもよく御相談をしてみませんからねえ、あすにでもなったら判っきりした返辞が出来ましょうから……」
と云い渋った。
園子の考えでは若い木村康男へおしもを嫁がせたいのである。老夫人にしても同じことだった。ただ、どういうわけか唐沢氏がそれを渋るのである。
その夜、いつものように炬燵で寛いだ折りに、老夫人は、
「園子から今日も電話がございましてね」
と切り出した。
夕刊に読みふけっている容子の唐沢氏は、
「ああ」
と応えて、遽しく頁をめくった。新聞に顔が隠れていて見えないけれど、不興気な表情がよく分るのである。