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こうじんぶつ
好人物
佐々木 邦
「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页
「それが然う行くもんか。あんなに親切に勧めてくれるんだもの。それに犬が片付く」
「犬ですって?」
「先方は教えたい一心だろう? 牧野君の絵と同じことさ。あの人は私が入門した祝いにこの竹を描いて表装までしてくれた。橋口君だってあの謡曲を教わってやれば全く只ということはない。犬の二三匹は屹度貰ってくれる」
と千吉君は馬鹿なことを言っている。
「ナカ/\勘定高いんですね」
と細君は覚えず笑い出したが、
「けれども御冗談は措きまして、イヨ/\お始めになると又一晩おそい日が殖えますわ。牧野さんのお宅の南画が一晩に関さんのお宅の碁が一晩ですから、一週三晩になりますよ」
「ところが橋口君は初めの中は少くとも一週二晩やらなけりゃ、いけないと言っている」
「すると晩い日の方が多くなるじゃありませんの?」
「成程、多くなるね。しかし交際だから拠ろない。何だって皆はこんなに芸を教えたがるんだろうなあ?」
「それはあなたが断り切れない性分ですから、つけ込むんですわ」
「矢っ張り人が好いのか? 余り好い積りでもないんだけれどね。無暗に勧めやがる。木下君は運動が必要だといって馬を勧めて困る。