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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

それに量の好いことは橋口君が証明している。東京の米屋のは一斗が一斗ないそうだ。奥さんのお里のは何んな素人が量っても、たっぷり一斗あるそうだ」

と千吉君は庄内米の為めに弁じた。

「あなたみたいな人はありませんわ。他人から云われたことは皆その通りだと思い込みなさる癖に私の申上げることは些っとも取り上げて下さらないんですもの。庄内米が日本一ってことはありませんよ」

「いや、日本一だよ」

「ねえ、八千代さん、岡山では備前米が日本一でしょう?」

と安子さんは姪に加勢を求めた。

「えゝ、然うですわ。備前米こそ真正の日本一ですわ」

と主張した八千代さんは米の実る木の岡山から来ている。

「熊本の人は肥後米が日本一だと申しますよ。お米や魚は誰しも自分のところで取れたのが一番好いと思っているんです。皆お国自慢ですから、それを一々本気になすっちゃ果しがございませんわ」

「はい/\、支那の人は南京米を日本一だと申しますよ」

と千吉君は、早く兜を脱いでしまえば宜いのに、細君の口真似をした。

「あなた、冗談じゃありませんよ。日本一にしても、橋口さんの奥さんのお里なんかから取って戴きたかありませんのよ」