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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

野菜はお手のものさ。電車にさえ乗れば東京だから、田園生活と都会生活が同時に出来る。それに地面と住宅が只とあれば申分なかろうじゃないか?」

「只なら多少不便はあっても申分はない。安子や、これは考えものだね」

「あなたじゃ駄目でございますわ」

と安子夫人は良人を信用していない。

「何あに、土地道楽に上手下手はありませんよ。早く儲かるか晩く儲かるか、唯時間の問題です。村島君、僕は橋口君と違って、家庭の迷惑になるようなことは決して勧めない」

と大場君はイヨ/\本題に入った。

七八年前実業界の景気が好くて会社が二十ヵ月分の賞与を出した頃、大場君は人の勧めに従って土地に資本を下した。というと御大層だが、荻窪の奥の大根畑を坪当り八円で四百坪買ったのである。

「実は千坪余りそっくりだと七円五十銭で手に入ったのだから、借金をしても買って置けば宜かったのに、当時はそれ丈けの胆力がなかった」

と頻りに残念がっている。しかし坪八円で買った土地が十五円二十円と急速の騰貴を示した時、大場君は胆力が据って来た。お説の通り借金をして、大根畑を買い始めた。

「何れでも二三年持ち堪えさえすれば相応儲かるのに、金利に追われるものだから直きに手放してしまう。