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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

この人は馬道楽だ。その昔輜重輸卒として三ヵ月間入営中厩の掃除ばかりしていたのである。しかし本人は、軍隊に居った頃馬の愛すべきことを知ったと言っている。こゝへ越して来たのも子供と馬の為めである。

「やあ、珍客だね」

と木下君はヒラリと馬から飛び下りた。

「村島君も僕等の仲間入りをするそうだよ」

と大場君が吹聴した。

「それは結構だ。いつ越して来る」

「未だ定った次第でもないが、好いところだね。羨ましくなった」

と千吉君は勧誘を求めるようだった。

「君、僕は一寸植木屋まで談判に行って来るから馬を貸し給え」

と大場君は馬の轡に手をかけた。

「未だ職人が来ないのかい? ゆっくり行って来給え」

「大場君も乗るのかい? 感心だね」

と千吉君は今日は万事感心することにしている。

「君、練習しちゃ何うだね? 好い運動になるぜ」

と木下君は唯一の健康法として、何人にでも乗馬を推薦する。

「じゃ一寸行って来る。その間に村島君を勧誘して置いてくれ給え」

と言って、大場君は手際好く馬を走らせた。

「巧いもんだ。皆夫れ/″\隠し芸があるんだね」

と千吉君は敬服して見送った。

「大場君も上手になった。