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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

私がバカで、きりょうが悪いってことじゃないの。器量の悪いのを承知でもらったんじゃないの。わがが美男子かなんぞのように、貴族だって。プロレタリア作家だの何だのいってるくせに貴族が気高いなんて、ずうずうしいじゃないの。子供だって女の子はみな我ままよ、でも私はそれでいいと思っていろいろしてきたのによ、お母さんは持物に手をふれさせんだって、じょうだんじゃない。鏡台も針箱も私のが珍らしくて私のばっかり使っていたのよ。タオルだって、はきものだって一しょよ。刺しゅう糸なんぞ今売ってないもんだからほしがってさ、少しずつ自分の糸まきにまいてゆくのよ。そんなこと知らん顔で、お母さんは甘えられないだって。若い者のように、やれ恋がしたいだの、死んだ奥さんの笑顔が魂をとろかしたのと、日記はそんなことばっかりかいてあるのよ。」

閑子はそれが野村の決定的な欠点であるかのように威丈高な口を利いた。野村の手紙で閑子より先にあらましを知っていたのだが、聞いていてミネは、ますます絶望せずにいられなかった。何という心の貧しさなのか。五十二になって恋がしたい夫の気持の若さをよろこびとすることのできぬ女、そんな女に対してまた、野村の期待は大きすぎたのだ。