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まごしちとずんど
孫七とずんど
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1943(昭和18)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,189 字 · 30 页
と喚きあい、敵兵は「もう城を乗られた」と狼狽した、それで城へははいらないでそのまま横へと算を紊して敗走した。味方の兵はもうそんなものは捨てて「城を乗れ」「城へ城へ」と怒濤のように城門へ殺到して来た。……われと思わん者は、そう云いかけたまま棒立ちになっていた孫七は、どっと押して来る味方の兵のなかへそのまま揉みこまれてしまった。
天方城はそのとき搦手をも破られていた。寄せ手の挾撃がみごとに功を奏したのに反し、城将久野弾正は要害をたのみ過ぎて采配を誤った、敗れた兵は敗れたまま散り散りになり、陣容をたて直す機をうしなった。これはもういけないと思ったのだろう、大手の城門が破られるよりさきに弾正宗政はさっさと城から脱出してしまった。もちろんそれで合戦は底をついた、敵の残兵は城将のあとを追って総崩れとなり、天方城は攻撃二日めで陥落したのである。
石原寸度右衛門は城の本丸の塁のところで孫七を捜し当てた。孫七郎は石に腰をかけてひどく衒れていた、なにしろいま軍目附が来て、かれの一番乗りを功名帳につけていったところなのだから。いくら説明しようとしても誰も耳を藉さなかった。