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まごしちとずんど
孫七とずんど
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1943(昭和18)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,189 字 · 30 页
「おまえまた面倒くさいことを云いだすんじゃないのか」
「面倒くさいことはないさ、物の道理を考えてみればわかる、だってそうだろう、独身ということは妻がないということだ、してみれば、順序として世継ぎの子もないという勘定になる、そうすれば、おれがもしこのつぎ戦場に出て、武運めでたく討死をした場合に、いったい誰が柿ノ木の家名を継ぐと思うのかね……」
寸度はもうそこにいなかった、我慢を切らして駈けだしていた。孫七郎はそのうしろ姿を見送りながら「おい石原寸度右衛門」と呼びかけた、「おまえはなしはわかったのか」すると寸度はふり向きもしないで、「わかった」と叫び返した、嫁のことひきうけたよと。孫七郎はいかにも憐れみに堪えないという眼つきで見やり、ゆっくりとこう呟いた。
「あれもこらえ性のない男だ」