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まごしちとずんど
孫七とずんど
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1943(昭和18)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,189 字 · 30 页
二
屡々そう云うので、人々はつくづく孫七郎の眼を見なおすけれども、なにしろ漠然たるもので、どこにそんな値打があるのか見当がつかぬといった具合である。そこで寸度はますます躍起になり「孫七はいまにきっと大物になる、必ず竜となって昇天するときが来る、いまは土中に蟄伏しているだけだ」などとりきみかえるが、当の孫七郎はどこを風が吹くかという顔つきなのではなはだ対照がおかしい「ははあ、土中の竜というとつまり土竜だな」そう云ってみんなはまぜっ返すわけだった。天正元年二月のある日、寸度右衛門がふいと孫七郎の住居へたずねて来た。孫七郎は部屋のまん中に坐り、箭を二本そこへ置いてなにかしきりに首を捻っているところだった。寸度があがっていってもとんと見向きもしない「なにをしている」と訊いても「やあ」というだけだった、寸度は構わずはいっていってその前へ坐った「おい孫七、箭を二本前に置いてなにを思案しているんだ」
二
「石原寸度右衛門か」そう云ってようやく孫七郎はこっちを見た「実はいかにもわけのわからない事があってな、この四五日というもの考えあぐねているところだ」
「なにがそんなにわからないんだ」