轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まごしちとずんど
孫七とずんど
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1943(昭和18)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,189 字 · 30 页
「ここに箭が二本ある」かれはいつものゆっくりした調子で、一語ずつ念をいれてそう云いだした、「つまりこれは二という数だ、三でもないし、また一でもない、縦から見ても横から見ても二だ、なあ石原寸度右衛門、そうじゃないか」
「たしかに箭が二本、それがどうしたんだ」
「算法では二を二で割ると一になるという、この二本の箭をこう両方へ割る、いいか、一本をこっちへ、また一本はこっちへ、……ところが見ろ、やっぱり箭は二本ある、一にはならない、このとおりちゃんと二だ、これは算法が誤っているのかそれとも……」
「今日は話があって来たんだ」寸度は黙って二本の箭をそっちへ押しのけながら云った、「いや算法なんかうっちゃって置け、話というのは先日も申した嫁のことだが、おまえ考えてみたか、どうだ」
「……うん」孫七郎はみれんらしく二本の箭のほうへながし眼をくれながらうなずいた、「考えてみたよ、だが石原寸度右衛門、あれはなかなか大きな問題だ」
「なにが大きな問題だ、たかが嫁をとるかとらぬか、世間ありふれた話じゃないか」
「おまえはむやみに嫁をとれ嫁をとれと云うけれども、よく考えてみると、嫁をとるということは、つづめて云えば妻をもつことだ、つまり云ってみれば独り身でなくなるわけだ」